雲の守護者はバンビーノ 02
〜そんなバカな。ベタな展開はマフィアも揺るがす〜
「と、取り敢えずベッドかどこかに運ばないとっ!!
ユダ!恭弥をベッドに運んで!」
「えー・・・」
「えー、じゃない。文句言うなら殺すわよ」
「ういっす」
恭弥にフラスコぶつけてしまった私は、焦りながらユダへと指示をだす。
殺意を込めた私の指示を怯えながら引き受けたユダをよそに、私はユダが無くした調合書を慌てて探しはじめる
万が一有害な毒だったりした場合、急いで解毒剤を調合しなければ取り返しの付かない事になるかもしれないからだ。
書類の束や、ペン立てをひっくり返しながら探すもののソレらしきものはまったく見当たらない。
代わりと言ってはなんだが、ユダに以前提出するように言った書類の束を発見した。
「アイツ・・・前に出せって言ったのに、まだやってなかったのね・・・!!」
書類の束を握り締め、静かにユダへの怒りを募らせる。
怒りで調合書を探すという本来の目的まで吹き飛んだ私は、ユダが恭弥を運んでいった医務室へと駆けた。
「ちょっと、ユダっ!!アンタこの書類・・!!」
「ちょ、わっ!!」
医務室のカーテンを引きちぎる勢いで開けると、そこには蒼い髪。
突然の私の登場に慌てるユダの胸倉を掴み上げ、書類の束を突きつける
「前に提出しろって言ったのに、まだ出してなかったのね!!」
「わ、悪かったって・・・ちょ、それよりも、コレ・・・」
怒気迫る私の勢いと剣幕にたじろぎつつ、ユダはベッドを指差す。
胸倉を掴みあげる手は一切緩めずにユダの指が指し示す方向を見ると、そこには
「だ、誰コレっ!?」
思わずユダの胸倉から手を離してベッドへと駆け寄る。
私が驚くのも無理は無い。
だって、ベッドの中には見たことも無い少年がいたのだから
「雲雀だ、雲雀」
「は?!きょ、恭弥っ!?」
ユダの言葉に素っ頓狂な声を上げながら、ベッドの中の少年をもう一度凝視する。
言われてみれば似てない事も無いかもしれない
黒い髪に、釣りあがった眼光。そして不機嫌そうにへの字に歪められた口元・・・
見れば見るほど恭弥だ
しかし、20をゆうに超えていたはずの彼に比べ、どう見てもこの少年は5歳くらい
・・・・・ま さ か
「・・・・あの薬のせい・・・・?」
「だろうなぁ・・・」
「って、だろうなぁ、じゃない!!
どういうことよ、コレ!!!?」
「ちっさくなる薬作るなんて俺って天才かもな」
「言ってる場合か!どうすんのコレ!?」
「このままでいいんじゃね」
「いい訳あるか!!」
「がっふ!!」
適当な事抜かしやがるユダに華麗にアッパーカット食らわせ撃沈させると、腕組みして思案を開始する。
・・・・どうしよう・・・本当に・・・
取り敢えず、この状況を打開する為の薬を調合しなくちゃいけないけど・・・まずは
「取り敢えず、皆に報告しないと、だよね・・・」
ちょこん、とベッドに座りこちらを見上げている恭弥を見て、小さく私は嘆息した。
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