「・・・・うそだろっ・・・っ・・・!!」
ダンデライオン
今日もこの間と同じ雨の日
幸い風邪がすぐ完治したは、今日も雨空の下出かけていった
またずぶぬれになって風邪引いて帰ってこられると、こっちの寿命が縮まる思いなので
「傘ちゃんと差して行けよ」
と念を押す
すると彼女はこの間の事も忘れたかのような態度で
「大丈夫大丈夫、行ってきまーす」
と言って出て行った
窓の外を見てみれば、雨の中オレンジ色の傘を差して歩くの姿があり
取り敢えず安心したオレは少しの間睡眠をとるべくベッドに横になった
ベッドに横になって数分、オレは何故か色とりどりの花の咲く花畑にいた
おそらくコレは夢なのだろうが、えらくオレには似合わない場所だなと夢の中で割りと冷静な頭が告げる
ティキ・・・・
「ん?何だ」
花畑の中にいてもすることのないオレは、しばらく花の中でぼーっとしていた
夢の中だというのに、やたらリアルに花の香りが鼻をつく
すると、どこからか自らの名を呼ぶ声が聞こえた
きょろきょろとあたりを見回してみれば、そこにはの姿があった
白いワンピースを身にまとい、微笑む姿はどこか儚く
遠くに行ってしまうのではないかとオレに錯覚させる
「なんだ?夢の中でもオレに会いたいのかよ」
夢の中のに挑発するように話しかける
いつもなら「そんなわけないでしょ!」と返してくるもさすが夢の中というべきか、
微笑んだままで「うん」と言った
そのままゆっくりと顔を上げると、手に握られていたオレンジ色の花をオレの手にそっと乗せる
今までありがとう、ごめんね?ティキ・・・
透き通るような声を残しては消えていく
「おい!待てよ、!!どういう・・・」
どういう意味だ?と聞く前に、彼女の体は吹き抜ける風に浚われ花弁と共に消えていった
「なんなんだよ・・いったい・・」
言いつつ、手に残された花を見やる
オレンジ色に咲き誇るその花は――――
「っ!!!っ!!」
夢から覚め、ベッドから勢いよく起き上がった俺は、傘も差さずに雨の中を駆け抜ける
どこだ、どこに行ったんだっ・・・!!
急く気持と相成って走る足も速まる
夢の中で渡された花は、たんぽぽ
『たんぽぽってさー』
『あ?なんだよ、いきなり』
『こんなにキレイなオレンジ色でとっても明るいのにさ
花言葉には「別離」っていうのがあるんだよ』
『へー』
『たんぽぽが綿毛になって飛んでいくのと一緒なのかな・・・』
どれくらい走り続けただろうか、たんぽぽが咲き乱れる花畑の中心で
たんぽぽのオレンジと同色のオレンジ色の傘を見つけた
駆け寄ってみると、花畑の中心で横たわる
「おい、ッ!!起きろ、しっかりしろっ!!」
抱き起こし揺さぶると、彼女はうっすらと目を開ける
しかし体は雨で冷え切っており、温もりを感じさせない
「あ・・・ティ・・キ」
「ッ・・・」
「ごめ・・ね・・・
もう・・わた・・し・・・」
「っ・・バカなこと言ってんな!!
しっかりしろよ!」
たんぽぽの花に囲まれ、今にも消えそうなが先ほどの夢を連想させた
消えないように少しでも彼女の体に温もりが戻るように、と彼女の体を強く抱きしめる
「ティキ・・これ・・・」
言いながらゆっくりと手を持ち上げ、握り締めていたタンポポの花をオレに手渡す
そして、やわらかく微笑むと
眠るように瞼を閉じた
『たんぽぽが綿毛になっていくのと一緒なのかな・・・・』
「っ・・・うそだろ・・・ッ!!」
彼女の体を抱きしめて、雨が肌を打つ中オレの叫びがタンポポ畑に響き渡った
数年経って、たんぽぽの咲き乱れる季節になった
オレンジ色に染まり太陽を思わせるそれは、の笑顔を思い出させる
「おーおー、なんだティキ花なんか見やがって
好きな女でも出来たか?」
「ばっ・・・ちげーよ!」
仲間に茶化され罵声を飛ばす
好きな女なんて、今も昔もアイツだけだ・・・
そう思いながら、タンポポを見つめていると横からイーズがタンポポの花を一つ差し出してくる
「どうした?イーズ」
「タンポポのはなことば・・・むかしおしえてもらった・・・」
そういわれると、彼女が死ぬ間際に残したたんぽぽの花を思い出しちくりと胸を穿つ
「へー・・・どんなのだ?」
知っているのだけど、なんとなくイーズの言う花言葉を聞いてみたくなって先を促す
「『真心の愛』」
「っ・・・!!」
イーズの言葉にはっとする
彼女が・・・が最後に残した花言葉は・・・別れじゃなかった?
真心の愛・・・か
「だったら・・・もっと早く言えよな・・・」
イーズから受け取ったたんぽぽの花を見つめながら呟いた
オレの頬には一筋の涙が伝っていた