泡沫
秋の月
切れ長の雲が月を少し隠して風情を出させている。
「今宵は、満月か・・・・」
この家の主朽木白哉は縁側に立ち、月を眺めていた。
「・・・・」
月に向かってそう呟き、そっと月から目を逸らした。
緋真が死んで、既に5年。
家中の者たちは、私に妻をめとれと騒ぎ立てているが、そのような気はなかった。
そう、彼女に会うまでは。
「白哉様」
「なんだ」
「はい、実は白哉様への縁談の話がございまして」
「必要ない」
「しかし・・・」
「必要ないといっている」
「・・・は」
頷き下がる爺。
縁談の話など、興味は無い。
どこぞの貴族が、この家との関係を築こうと計っているのだろう。
そう考えながら私は、相手の顔だけでも見ておこうと、部屋を出た。
「白哉様は、この話はお受けにならぬと申されております」
「そうですか・・・」
幾度か廊下を曲がり、辿りついた一室から爺の声と、縁談を持ってきた男と思われる人物の声が耳に届いた。
「・・分かりました。それでは、失礼します」
障子が開けられ、中から男と
もう一人。
豪華という訳ではないが、美しい着物を身にまとい
透き通るような白い肌に、艶やかな美しい漆黒の髪。
思わず目を奪われ暫く、彼女を見つめていた。
すると、男の方が私に気づき、その場に手を付き何事か喚いているが
後ろの娘に目を奪われていた私には、何を言っているのか分からなかった。
いまだに跪いている男の横を通り抜け、娘の傍へと行く。
「お前・・・名は何と言う」
私の突然の問いかけに娘は、驚いたように目を瞬かせるが
すぐに笑顔になり
「と申します」
と言った。
美しいと思った。ただ純粋に。
それから、何ヶ月か経ち、私は気まぐれにのいるという屋敷へと足を伸ばした。
もう一度、彼女の笑顔がみたいとそう思った。
屋敷まで来ると縁側には、がいた。
何をするでもなく、ただ縁側に座っている。
私は、自分でも気づかぬ内にに声をかけていた。
「何をしている」
「!白哉様!!何故このような場所へ?!」
「用があるというわけではない、何をしているのだ?」
「・・・いえ、この澄み切った空を見ていれば、心も晴れると思ったのです」
「何かあったのか?」
「・・このようなこと、白哉様に話すようなことではございません」
「構わぬ。話してみろ」
「はい・・・実は、白哉様との縁談が無くなった事で、他の家との婚約が決まったのです」
「!!」
表情にこそ出さなかったが、驚いた。
は、そのまま語り続ける。
「私が我慢すれば、この家は救われます・・・」
「どういうことだ」
「はい。我が「家」は、長きに亘り上位の貴族でした、ですが先代の当主
私の祖父の代で、貶められ今では貴族の中でも下位に位置します。
この家が、救われるなら・・・・私は」
「お前はそれでよいのか?」
「構いません・・・でも―――」
ザアッ
私との間を一陣の風が吹きぬけた。
最後のの言葉は、風にかき消されうまく聞き取る事ができなかった。
それから、暫くについて聞くことは無かった。
しかし、衰えていた家の地位は回復の傾向をみせている、との話を爺から聞いた。
その話を聞いたとき、彼女の笑顔がふと浮かんだ。
しかし、その笑顔は彼女に初めて会った時の陰りの無い笑顔ではなく
どこか儚げな、悲しみを帯びたような笑みだった。
嫌な予感がする。
ぞくりと、肌が粟立つ。
爺から、の嫁いだといわれる家を聞き出し、その家まで走った。
たどり着いたそこは、豪勢な屋敷だった。
だが、辺りは鯨幕で覆われ屋敷の外に溢れかえっている人々もまた、黒い喪服のようだった。
辺りから人の声が聞こえる。
「かわいそうに・・・ここの奥さん・・・」
「あんなに若いのに・・・なんでも病気らしいわよ・・・」
「そうなの・・・お気の毒に・・・」
周囲の声にまさか、と思い門をくぐる。
そこで目にしたのは、
写真の中で笑う彼女の姿。
―必要だったわけじゃない。
――自分にとってなにか大切だったわけじゃない。
―――緋真以外に女性を愛する事はない。
そう、思っていた。
じゃあ、この胸の痛みはなんだ?
何が私をここまで哀しくさせる?
あぁ、私は・・・・
彼女の事を想っていたのか・・・・
その想いに今気づいても、彼女はもうこの世にはいない。
再び笑いかけてくれることも。
話しかけてくれることも。
もう、ないのだ。
の遺影に背を向けて、私は家を出た。
外は、徐々に日が陰り始め少し月が出ていた。
今宵は満月。
美しいソレは、彼女を思い出させた。
――でも、できることなら貴方の元へ嫁ぎたかった
あとがき
はーい。くろごまです。
意味不明ですね・・・ハイ
ごめんなさい(平謝り)
次からもっとがんばります!!