いつからかあの人に繋がる事をしなくなったこの電話
幾度かのコール音と共に、無機質なセンターの声が耳元で囁く
――この電話は、繋がらない、と
震える指先が幾度目かのリダイヤルボタンを押す
何度目の行為だろう
何日前からこの電話を握り締めて、彼からの電話を待っているのだろう
彼が居なくなってしまった事で広くなった部屋の片隅に座り込みながら
窓の向こうの薄暗い空を見詰める
彼が旅立ったのは3日前
彼がマフィアだということは知っているから
どれだけ仕事が危険かということも知っている
だから、怖い
繋がらないこの電話が
薄暗いこの空が
彼の居ないこの部屋が
彼の無事が分からない
彼を髣髴とさせる太陽が、見えない
一人ぼっちの空間
「っふ・・・」
頬を伝って流れる涙
一人の空間には漏れる嗚咽も響いて聞こえた
「会いたいよ・・・綱吉・・・」
握り締めた電話
鳴り響くコール音
後幾度鳴らせば、彼にこの音は届くのか
いつか繋がればいいと願うだけ
(いいえ、本当はスグにでも貴方の声が聞きたい)(それを叶える為にはこうして待つだけではだめなのでしょう)