「おい、っ!!!」
「・・・?スクアーロ隊長。どうなさったんですか?」
そんなに慌てて
と、息を切らしてに近づいた俺と違い、いつものようにおっとりとした声では返す
ふわふわと笑うの笑顔にいつもならばどもっちまう所だが、今日はそんなことは関係ない
それほどまでに焦っていた
だって
この、笑顔が、無くなるかもしれないのだから
「どうしたじゃねぇっ!!お前、今度の任務に出んのかぁ?!」
「今度の任務・・・?あぁ、敵陣ファミリーへの先行突入の事ですか?」
「あぁ、それだぁ」
「・・・それでしたら、参加致します。上より指令が下っておりますので」
「っ・・・!!」
の言葉に、俺は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受ける
今度の任務に参加だぁ?確実に死にに行くようなもんじゃねぇかぁ!!
今度が勤めるという任務は、敵陣ファミリーへの先行突入
先行突入というだけあって、最早捨て身の突入でもある
敵方のファミリーに切り込み、後軍の活路を開く為の決死の作戦
しかも、この切り込み部隊は、陽動の役割もある
後軍が安全かつ確実に任務を成功させる為、切り込み部隊の人間は陽動として敵を引き付け尚且つ大半を迎撃しなければならない
後続突入部隊が任務を成功させた後に先行突入隊の人間を助ける事は不可能に近かった
は、その先行突入隊
絶望的とも言えるファミリーの取り決めが事実であったことに、スクアーロは歯噛みした
「スクアーロ隊長は後続部隊でしたよね?
私、頑張って敵を引き付けますね」
突入の恐怖など微塵も感じさせないの笑み
心の奥底では言い知れぬ恐怖を隠しているのかもしれないが
スクアーロには何故かそれが酷く苛立たしかった
ダンッ
と、を壁に押し付けながら肩口を押さえ、真剣にその双眸を見つめる
の漆黒の双眸は、不思議そうに俺の眼を見上げていた
「ふざけんじゃねぇ!!今度の任務っつったら、生きていられる見込みなんてねぇじゃねぇかぁ!
お前は・・・生きたいとか思わねぇのかぁ?!」
俺の問いに数度瞬きを繰り返していただが、一瞬顔を伏せたかと思うと
ふっ、と微笑みながら言う
「思ってますよ?私は、生きたいです」
「ならっ・・・」
「でも、私でなくちゃならないんです」
ボンゴレ9代目からの直属のお達しであり、尚且つ現戦闘員の中で陽動・先行突入をやってのけることの出来る人間は限られている
今回の任務を請け負ったスクアーロの隊で、それが出来るのは自分と数名の隊員しかいないのだ
と、は言う
しかし、スクアーロは食い下がらない
「だったら、俺が上に掛け合って他の隊から人員くらい集めてきてやる
だから、お前は・・・!」
俺と一緒に後続部隊に
と、続けようとした言葉は、によって遮られる
「何を言っておられるのですか、スクアーロ隊長。
9代目にたて突いて、ご自分の立場を危うくするおつもりですか?」
「死ぬかもしれねぇんだぞぉ!?」
「それがどうしましたか。
私ごとき一隊員の為に、スクアーロ隊長が立場を危うくする必要はありません
それに、人員確保と言ってもベルフェゴール隊長の隊も、レヴィ隊長の隊も、ほとんどの隊は他の任務で動いていて確保できるだけの人員は、いません」
「俺はお前を隊員として見て言ってる訳じゃ・・・・!!!」
言おうとした言葉は、唇に当てられたの指によって押しとどめられる
驚いてみた先のの瞳は、今までに見たことの無いくらい悲しい色を帯び
今にも泣き出しそうなくらいに潤んでいた
「それから先は、言っちゃだめです・・・」
「・・・」
「私・・・頑張って、生き残りますから・・・
だから、帰ってきたら・・・続き、聞かせてください
私も、きっと隊長と同じ気持ちですから・・・」
潤んだ瞳から涙は零れ落ちる事は無く
はそう俺に微笑みかけた
なんでおまえなんだ
どうしておまえじゃなくちゃならない
なぜおまえをつらいめにあわせなくちゃならないんだ
言いたい言葉はたくさんあった
だが、喉の奥に張り付いて出てこない
全ての言葉は出し切れずに、ただ嗚咽にも似た呻き声と共にお前を抱きしめる事しかできなかった
悲壮美は薔薇の花言葉と共に
(死ぬほど、恋焦がれる貴方)