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さぁ、幻惑へと身を委ねましょう
悲壮シンドローム
「ほら、早く食べないと冷めてしまいますよ。骸さん」
「クフフ・・・彩が食べさせてください」
「!何言ってるんですか、もう!」
言いながら僕の前の席へと座る彩。
その頬は僕の言葉のせいか、若干朱を帯びている
席に着いて先に自らが作った料理を食べようとスプーンを手に取ったが、じっと見つめる僕の視線に耐えかねてか
一つ大きくため息を付いてから僕のスプーンを手に取った
「おや、食べさせてくれるんですか?」
「・・・どうせ私が食べさせなかったら食べてくれないんでしょう?」
「クフフ・・・よくお分かりで」
「もう・・・
はい、あーん」
「あー・・・」
促されるままに口を開けば、彩が差し出したスプーンが口へと入ってくる
彩がスプーンを引き抜くと、僕の口の中には少し冷めてしまった料理が残っていた。
ゆっくりと咀嚼して飲み込んだ料理は『美味い』と賞賛するに値する物だった
「相変わらず彩は料理が上手ですね」
「ふふ・・・ありがとうございます」
「これならば十分僕の妻になれますね」
「!な、何言ってるんですか!冗談は止めてください!」
「クフフ・・・冗談では、ありませんよ?」
少し真剣な声色でそう言うと、彩の顔は先程よりも赤くなる
表情がころころと変わる彼女は、見ていてとても楽しい
それに、とても愛おしい
こんな感情、僕に芽生えるコトは無いと思っていたのですけどね
「む・・・さま・・・」
「!」
「どうしたんですか?骸様」
「・・いえ。彩、今何か聞こえましたか?」
「?いえ、何も」
「・・・そうですか・・・」
では、今のは一体・・・?
微かに聞こえてきた声に、首を傾げる
「む・・さま・・・むく・・・さま・・・骸様!!」
「!!」
何の声だったのだろうか。
そう思案しようとしたところに、先程の声が再び響き今度は先程より大きく僕を揺さぶった
声の方に意識を向ければ、目の前にいた彩の姿が遠ざかっていく
「!待ってください!彩っ!!」
深い闇へと遠ざかっていく彩に慌てて手を伸ばしたが
急速に遠ざかっていく彩に、その手は届かなかった―――
「っ・・・はっ・・・・」
「・・・大丈夫ですか・・?骸様」
額を伝う汗と、激しい息切れを感じながらゆっくりと状態を起こす
周囲を見回してみると、そこは見慣れた黒曜ヘルシーランドの光景が広がっており
自分の近くにいるのは、千種だけだった
「千種・・・彩は・・・彩はどこです?」
近くにいない彩に不安を覚え、そう千種へと尋ねると、千種の顔は悲痛そうに歪められる
「骸様・・・彩は・・・いません」
「!!
あぁ、なんだ。犬と買い物にいっているんですね」
「・・・骸様・・・彩は・・彩は、死にました」
現から眼を背ければ、いつでもそこに君が笑っていてくれるのに
(僕は、君が死んだなんて信じられないんですよ)
(だから、今日もまたキミの幻を観る)