学生の唯一の心の安らぐ時間、と言っても過言では無い昼休み

友達と他愛も無い談笑を繰り広げるものや、外でボール遊びなどを算段するものが多数存在する中

少女――は一人、席に座り黙々と作業を続けていた。

白い紙の上に並ぶ数字の羅列

の焦りようから察するに、所謂宿題、というものだろう。




「なにしとるんじゃ?」


「あー・・・うるさい仁王、気が散るっ」




そんなの無言の格闘を妨害するように現れた男――仁王雅治は、席に着いてなにやら奮闘しているに話しかけた

しかし、宿題という関門と格闘中の

仁王の存在は邪魔にしかならないため、扱いもぞんざいだ




「随分冷たいもんじゃの。どれ?」


「あ、ちょ、返せっ!」




なおも引く気配の無い仁王などお構いなしに目の前のプリントとの格闘を再開していると

不意に目の前からプリントはなくなってしまった

目の前から消えたプリントは、今や仁王の手の中に綺麗に納まっている


取り返そうと手を伸ばすも、仁王によって引き離されてしまい

伸ばした手は虚しく空を掻く



「・・・昨日の数学のプリントか・・・まだ出来てなかったんか?」


「・・・」


「確か、お前さん数学得意とか言っとったの」


「・・・が」



「ん?なんじゃ、もっとはっきりいいんしゃい」



「証明問題が解けないのよっ!」




バンと机を打って立ち上がったは、言いながら仁王の手から数学のプリントを奪い取る

プリントを机に勢いよく掌と共に叩きつけると、座って再び格闘を始めた

仁王はそんなの様子ににやりと笑って言う








「・・・・」



「俺がその宿題手伝ってやってもいいぞ」



「!本当?」




数学のプリントとにらめっこをしていたが、仁王の言葉にパァッと顔を輝かせて振り返る

仁王は相変らず口元に笑みを浮かべたまま「おう」と頷き「ただし」と続ける




「条件付きだがの」



「条件?何よ」




仁王の言う条件とやらにはむっと顔を顰める

仁王が言うのだ、きっと碌でも無い事に違いないだろうなどとが考えていると、仁王は息がかかるくらいにに顔を寄せた




「!」



「俺の彼女になってくれるなら、それ手伝ってやってもええ」



「!はっ?!

 ば、バカじゃないの!?」



「で、どーする?」



仁王の言葉には顔を真っ赤にすると、プリントと筆記用具を掴んで席を立った




「からかわないで!

 いいよ、柳君に聞いてくるから!バカ仁王!」



教室中に響き渡る大声で叫びながら、は勢いよく教室を飛び出す

の背を見送りながら、教室中の視線を一身に浴びることになった仁王は頭を掻きながら呟いた




「俺は本気、だったんじゃがのう」








その代償

 

 







あとがき

初仁王夢

仁王はもっとかっこよくて余裕あるんですけどね・・・










おまけ




「キミのその態度がいけないんじゃないんですか?」



「なんじゃ、柳生聞いとったのか」



「聞くも何も、聞こえたんですよ

 それよりも、彼女にちゃんと謝った方がいいんじゃないんですか」



「やっぱ謝らんとまずいかのう」



「ええ

 彼女、口も聞いてくれなくなるかも知れませんよ」



「あぁ・・・そりゃ困るぜよ」