「なぁ、

 お前、鬼纏できねぇのか?」


「私が・・・?」




淡島に言われて首を傾げながら考える

確かに、人間の血と妖の血を持つものだからこそできるのがリクオ様の鬼纏である

私は、八咫烏の半妖だ

確かに人と妖の血は持っているので、鬼纏をできるだけの条件はもしかしたら揃っているかもしれない




「でも・・・まぁ、私には無理だと思いますよ?」



「なんだ、つまんねーなぁ

 鬼纏っていうのがどういう感覚か知りたかったんだけどよー

 リクオが俺を鬼纏わねーからさ」




ま、仕方ねえな!と言って淡島は快活に笑った

つられて笑い返すと、ぬっと複数の気配が近くに現れたのを感じる

振り返るとそこには、リクオ様、黒田坊、首無といった本家のそうそうたる顔ぶれが揃っていた

思わず固まる私



「ど、どうしたんですか皆様・・・」


「話は聞いたぜ、

 鬼纏をしてみたいんだってな」


「い、いえ、私はやりたいなどとは一言も・・・」


ならば、我らが手伝わせていただこう


「いえ、ですからやりたいなどとは・・・」




私を置いてやる気満々の様子の三人は、満面の笑みを浮かべながら私を見ている

鬼纏の習得のための修行と言うのは、そんなに楽しいものなのだろうか

なにやら異様な雰囲気を感じ取りつつ、助け舟を探して淡島を振り返れば、既にそこに姿は無かった

に、逃げられた・・・!!

逸早く三人から逃げた淡島を恨めしく思いつつ、どう現状を打開すべきか思案する




「鬼纏と言えば俺だろう、


「え?!あ、はい」



突然の問いに驚いてうなずけば、リクオ様はにやりと口元に笑みを浮かべた




「鬼纏を習得したいなら、まず感覚を掴むのが早ェ

 というわけで、

 
畏を開放して、俺に鬼纏われろ



はい!?



なにやらとんでもないことを言われた気がする

リクオ様はにやりと笑ったままじりじりと私に近寄ってくる

そんなリクオ様と私の間にすっと割って入ったのは、黒田坊さんだ



「リクオ様、強引になされるのはいかがなものかと」


「なんだ黒」


「ここはリクオ様に鬼纏を習得させた、私がに教えるのが得策と

 
みっちりと手取り足取り


「手取りっ・・・
みっちり!?


「ふざけんじゃねぇ!」



胸を張って黒田坊さんが高らかに宣言する

またなんだかとんでもないことを言われた気がするが・・・

黒田坊さんの言葉に戦慄しつつ、二人が言い合いを始めたのを好機とし

後ずさりながらこの場を去ろうとすると、背後に暖かい何かを感じた



「首・・・無さん・・?」


「大丈夫かい、


「え、ええ・・・」



こくりと頷くと、首無さんはそっと私の肩を抱いたまま柔和な笑みを浮かべた

そして私の前で依然言い合いを繰り広げる黒田坊さんとリクオ様を見て燦然と言い放つ



「リクオ様、黒田坊・・・
いやエロ田坊!


なぜ言い直した首無!!拙僧はそんなやましい気持ちなど・・・!!」


「どちらでも構わないが、に強引に教えようとするのは頂けないな・・・

 ここは俺が、優しく丁寧に教えることが一番の近道だと思うよ」




ねぇ、?と言って首無さんは笑う

そんな顔で微笑まれると、思わず頷いてしまいそうになる

が、




「首無・・・黒・・・俺の邪魔をしようとは良い度胸じゃねぇか・・・」


「いくらリクオ様であろうと、はやれませんな」


「同じく・・・
特にエロ田坊にはやれないな


首無貴様拙僧に何か恨みでもあるのか?!


特には


「あ・・・あのー・・・皆様・・・?」





各々武器を構え、なぜか臨戦態勢に入ってしまった

なぜこのような状況になったのか、と頭が痛くなる

僅かに痛み始めたこめかみを押さえながら、恐る恐る今にも戦いを始めそうな三人に控えめに声をかけた

すると三人ともくるりと一斉にこちらを見たので、思わずびくりと体が跳ねた

どうやってこの三人を止めようかと考えていると、リクオ様の口の端が上がる

これは何かを思いついたときの顔だ




「なんだ・・・簡単な方法があるじゃねぇか」



「え・・・?」



、お前誰に鬼纏を教わりたいか、言え」



「ええ!?」



有無を言わさぬ口調でリクオ様が言う

すると、首無さんも黒田坊さんも武器を下ろして期待に満ちた目でこちらを見ているではないか

そもそも鬼纏を習得する気など無いというのに、それを言える状況でもなくなってしまった




「わ・・・私は・・・・!」




三人の顔を見ながら口をもごもごさせて何と言ったらこの状況を切り抜けられるのかと考えるが

三対の視線にじっと見詰められると、どうも上手く頭が回ってくれない

しかも自分の一言でまたあの臨戦態勢になるのかと思うと滅多なことは口に出来なかった

ただただ、おろおろと視線を彷徨わせながら心の中で「誰か助けて!」と叫ぶ

すると、




「何をやっていらっしゃるんです?」



と、可愛らしい声がリクオ様の後方から聞こえた

皆視線をそちらに向けると、そこにはつららが立っていた

つららの姿に安堵しながらも、リクオ様たちの間を走って抜けつららにしがみついた



?!どうしたの?」



「ううっ・・・つらら・・・

 私は鬼纏の修行をするのならつららとする・・・!!」



「「「!?」」」




がん、と衝撃の走った顔をする三人

しかし私には三人を気遣う気はない

なぜなら、良くわからない三人の争いで散々追い詰められたから




「何のことか良くわからないけど・・・

 リクオ様方、これ以上に何かしようものなら

 
凍らせますよ




にっこりと笑いながらつららは言う

しかし周囲の空気は凍りついたように寒かった

思わず身震いする

さ、行きましょう、とつららに促され、並んで三人から離れるべく歩き出す




「お、おい・・・」



「・・・」



リクオ様が私を止めようと名を呼んだが、一瞬だけ振り返って、つ、とすぐに視線を逸らした

くっ!と唸るリクオ様の声を背に受けながら、鬼纏などしない!と心に誓ったのであった

















「くっ・・・・・・!!」


「やはり少し強引だったか・・・」


・・・少々すまぬことをしたか・・・」


「それもこれも、黒田坊・・・いやエロ田坊のせいか・・・」


何故だ!?


「てめぇ・・・黒・・・!!」


何故拙僧が・・・!!

 拙僧が何をしたというんですか・・・!!




 

どんまいとしか・・・
良い文章降って来い!良い内容も降って来い!(。´Д⊂)うぅ・・・。