「新年まであと少しだな・・・」


「そうじゃのー・・・早いもんじゃ」



奴良組の貸切となっている宿の一室で、月を眺めながら狒々と過ごす

今年もあと少しで終わりだ

この一年、いろいろとあったなと思い返す



総大将が突如大阪城に特攻したり

宴会中に切れた雪麗に凍らされかけたり

京にいる間はなんだか知らないが陰陽師に気に入られて式紙に追い掛け回されたり

酒の入った狒々に皆の前で犯されかけたり(!)



・・・大変だったなぁ

湯呑み茶碗を両手で握り締め、一年の中で特に記憶に深く刻まれた部分を思い出すとなんだか涙が出そうである



「どうした、


「いや・・・大変だったなと思ってな・・・!!」


「そうか?」



お前のせいでもあるんだぞ・・・!!とでかかった言葉を飲み込む

狒々は首を軽くかしげると、



「おぉ!そう言えば」



と言って部屋を出て行った

しばらくして部屋に戻ってくると、手には着物を抱えている




「?その着物どうしたんだ?」


「新年だからな、ワシが用意しておいた」



ほらよ、と言って私に着物を差し出す

紅い着物に金色の刺繍が施されたそれは、どう見ても高価なそれである




「なっ、」


「ワシが似合うと思ったから買ってきたんじゃ

 いいから着ろ」



こんな着物私にはもったいないから着れない!と言い切ることも出来ずに

有無を言わさぬ調子で狒々が言う

ぐぃっと押し付けられたその着物を渋々受け取ると、狒々は満足げに笑った



「では・・・着替えてくる・・・」


「おう

 なんならここで着替えてもいい・・・」


「隣の部屋で着替えてくる!」


「つれないのー」




唇を尖らせながら言う

そんな狒々の姿に小さく笑みをこぼしながら、隣室の襖を閉めた













狒々に寄越された着物は、やはり豪著でとても私に似合うとは思えなかった

紅い着物の裾には金糸で刺繍された蝶が舞い、目を引く色合いであるながらも決して下品ではない、美しい着物だ

コレを着るのが本当に私で良いものかと思うものの、この着物を私が着ることを狒々は楽しみにしているのだ

先ほど見た狒々の満面の笑顔を思い出し、嘆息しながら着ている着物を脱いで、紅い着物に袖を通した









「着替えたぞ」


言いながら俯き加減に襖を滑らせる

相変わらず髪は結えないため、共に渡されていた簪は軽くまとめた髪に挿すだけに留まっており

激しく動こうものなら落ちそうな不安定さだ



「おぉ、やはり似合うの」



狒々に言われ気恥ずかしくなりながらも顔を上げると

いつもの小袖ではなく、袴に着替えた狒々の姿がそこにはあった

普段見慣れない狒々の姿に、着物の合わせをぎゅうと握り締めて高鳴る心臓を押さえた



「狒々、お前その格好・・・」


「新年じゃからの

 どうじゃ、似合うか?」


「・・・似合っている」


「そうか!」



袖を軽く持ち上げながら狒々は笑った

その様子にさらに心臓がどくどくと脈打つのだが、なんとかそれを押さえながら狒々の隣まで移動する



「なんじゃお前、その簪の留め方は」


「私が器用でないのは知っているだろう」


「おぉ、そうじゃったの」



わざとらしく笑いながら手早く私の髪を綺麗に結い上げ、簪を止めた

不安定さをなくした簪は、頭を揺らせばしゃらんと音を立てる




「やはり似合うものを選んできてよかったの

 綺麗だぜぇ、


「あ、ありがとう・・・」



ぎゅう、と狒々に抱きしめられて顔が熱くなる

さらにいつもと違う雰囲気の狒々に余計に胸がどきどきと脈打ち、自身でどうしたら良いのか分からず狒々の体に縋るように抱きついた



「やけに今日は甘えてくるのー


「う、うるさいっ」


「まぁ、可愛いからいいんだけどよぉ」



言って狒々は額に口付けを一つ落とす

つられるようにして、顔を上げた私は予想外に近くにあった狒々の唇に口付けた

予想外だったのか、狒々は一瞬動きを止めたのだが次の瞬間には浅い口付けを深いものへと変えた



「んっ・・・ふ・・・」


「可愛いのう・・・



いつになく優しい狒々の目に見詰められ、頭までくらくらとしてくる

再び狒々に縋るように抱きつくと、狒々は優しく抱き返してくれた

幸せと思えるような時間にどっぷりと浸っていると、新年を告げる鐘の音が響く

次の瞬間には、どこかの部屋から「新年じゃー!」と言う声が聞こえ、酒宴でも始まったのだろうか皆の騒ぐ声が響いてくる




「明けまして、だな」


「そうじゃのう

 今年も、よろしくな


「あぁ・・・」



狒々に抱きしめられたまま頷くと、狒々は私を腕に抱いたまま「さて」と言って立ち上がった



「ん?狒々?」


「なんじゃ」


「どこに・・・?」



と尋ねるが早いが、狒々はどさりと私の体を横たえた

その上に狒々が乗る

満面の笑みで



「ななななな何をする気だお前・・・!!」


「何って・・・分かるじゃろう

 姫始めじゃ」



ニヤリと不穏に笑って狒々が言った

その笑顔に戦慄する私




「ば、ばか!!普通最初に総大将への挨拶が・・・!!」


「んー?そんなもん朝で構わねぇよ」



組の総大将への新年の挨拶を”そんなもん”とは

呆れて嘆息しているところで、狒々が帯を解き始める



「ちょ、おい、狒々・・・んっ」


「ふっ・・・良い声じゃ

 、愛してるぜぇ」



耳元で甘く囁かれて、抵抗する気力さえ奪われる

新年最初から、こうして私は狒々に美味しく頂かれることとなった











(それにしてもやはりあの着物は良かったのう)

(一刻も着ていないがな・・・!)

(そりゃぁそうじゃ、脱がせる為に着せたんだからのう)

・・・・・・は!?

(いつもと違うの姿、良かったぜぇ)

(〜っの、バカ!!!)



 

文才降って来い!!頼むから!お願い!。・゚・(ノД`)・゚・。