「ユウの馬鹿!もう知らない!!」

聞き覚えのある、少女の怒声に足を止める。

「勝手にしろ」

そして自分が最も嫌悪する(されてる、というのも正しい)人物の声まで聞こえ、無意識に表情が歪む。



足音が近づく。

踵を返そうとしたが、その足音はどうやら少女の方のようで、その足を止めた。



「あ、アレン君」





足を止めて良かった、と思う。

今、目の前にいる少女、 は自分の思い人で。

大きな瞳に溜まる大粒の涙を零さないように必死に堪えている。

その姿も可愛いと思ってしまうのは惚れた弱みであり、自分が相当彼女に心奪われている証拠なのだろう。

そんな彼女と出会えた黒の教団には感謝もしている。



だが、一つだけ腑に落ちない事がある。



と、先ほどの自分が最も嫌悪する人間、神田ユウと付き合っている事だ。


































僕と が出会ったキッカケは僕が任務から帰り
極限状態まで空腹だった時、食堂への道を誤ってしまい本気で死を覚悟した時だった。










『大丈夫?』



半分以上がトラウマの走馬灯が駆け巡る中、僕に手を差し伸べてくれた

正直、彼女が女神に見えた。

この瞬間から、僕は彼女に恋をした。

空腹で死にそうになっている事を利用して、 に食堂まで肩を貸してもらおうとした所、



、何をしている』



あの蕎麦男、神田が来たんですよ。

何をしているってお前、見れば分かるだろ。どっかの蕎麦男と違って は優しいから僕を救済しようとしてくれているんだよ。

とか何とか考えている内に、 の手を握り、引っ張っていく神田。



『ちょっと待って、ユウ!アレン君、食堂に連れて行かないと・・・』

『食堂?ンなもん一人で行けるだろ』

『道に迷っちゃったみたいなの』

『チッ・・・・・オイ、モヤシ。食堂はすぐ下の階だ。分かったらテメェ一人で行け』



それだけいい残すと、神田は を連れて去っていった。










・・・今思い出しただけでも腹立たしい。腹立たしい(二回言った)


後日、リナリーにあの二人が付き合っているという事を聞き、あまりのショックに咎落ちしそうになった。


あの蕎麦男。

蕎麦と結婚でもしていればいいのに。

蕎麦男蕎麦男蕎麦男蕎麦男蕎麦男蕎麦男蕎麦男蕎麦男蕎麦男蕎麦男蕎麦男蕎麦男・・・



「アレン君、どうかしたの?」

「い、いえ!なんでもありません!・・・あの、神田と喧嘩、したんですか?」

どうやら図星のようで、僕の言葉に が反応した。

には悪いなと思いつつも、神様のくれたチャンスに心の中でガッツポーズを取った。

「すいません、立ち聞きするつもりはなかったんですけど・・・」

「ううん・・・私の方こそ、見苦しい所を見せてごめんね」

今にも泣き出しそうな

僕だったら絶対に を悲しませるような事はしないというのに。

「そんな事ないですよ。・・・あの、もしよければ話してもらえませんか?」

「え?」

「誰かに話せば少しは気が軽くなると言いますし、そんな辛そうな顔をしている を放っておけませんよ」

口説き言葉の最後に笑顔を付ける。

はにかみながら戸惑う

「・・・それとも、僕じゃ、いけませんか?」

「そんな事・・・」



「オイ、モヤシ」



かつてないほど、低い神田の声。

「何、人の女に手ェ出してやがんだ」

「・・・神田ですか」

チッ・・・あともう一押しだったのに、と心の底で毒づく。

「ユウ・・・」

。お前も何、モヤシなんかと一緒に居やがるんだ」

「だって・・・私は嫌だって言ってるのに、ユウは全然聞いてくれないじゃない!」

「ちょ、嫌がる に無理やり何をさせようとしてたんですか!
この蕎麦男!!変態!!馬鹿!!蕎麦オタク!!お前の六幻デベソ!!」

「ここぞとばかりに貶すんじゃねぇよ!!・・・いいっつってんだろ・・・」

「え?」



「今日の晩飯はうどんでもいいっつってんだろ!」



「は・・・・・・・・・・・・・?」

突然、何を叫びだすのか、この男は。



「本当?!ありがとう、ユウ!」

それに対し、喜ぶ

何が何だか、意味が分からない。

「アレン君、ありがとうね」

「とっとと行くぞ」

の笑顔に照れているのか、やや頬を紅潮させながら手を差し出す神田。

「うん」

もまた照れくさそうに笑いながらその手を取り、やや神田に手を引かれながら歩いていった。














「あれ?アレン君、どうしたの?」

偶然通りかかったリナリーに、そう声をかけられた。

「・・・あの二人、何で喧嘩してたんですか?」

「え? と神田の事?」

「はい」

「神田は蕎麦が好きなのは知ってるわよね?」

「嫌なくらい」

はうどんが好きなのよ」



だからその事でよく揉めてるのよ、とリナリー。

つまり、アレは日常茶飯事で。

いわゆるカップルの幸せな痴話喧嘩という訳か。

あまりのアホらしさに突っ込む気力も失う。



「・・・今日も平和ですね」

「そうね」

































―あとがき―

大変遅れて申し訳ありません;
人様に捧げる小説だからキャラが壊れるギャグはいけない、と唱え続けたらこんな物に・・・!(汗)
くろごまさん、よろしければ貰ってやって下さると嬉しいです・・・!
そしてどうかこれからもよろしくお願いします!