俺はブックマン――『記録する者』の後継者
『記録する者』とはその名の通り、全てを記録するのが役目だ。



俺はその後継者。
出会った人、事件、歴史・・・全てを記録する


触れ合ってきた人間もオレにとっては只の記録の対象
深入りすることもないし、されることもない





でも―――コレはオレのミス


たった一つの例外



やっぱ、深入りなんてするもんじゃないし、させるもんでもない
深入りすれば、冷静に人を見ることもできないし妙な情が沸いてしまうものだ
なによりも、失った時が、辛い、と俺は記録している


今、その例外が死んでしまったことで頬を伝う涙が、それを証明しているということなのだろう



横たわる白磁の肌に、まだ赤みの残る頬
自らが深入りした――否、愛したといってもいい存在の眠るような最期が目に焼き付けられる



これもブックマンの後継者としての性なのか
今にも目を背けたいはずのこの現実からも、目を背けられずに其の事実を鮮明に記憶しようとしてしまう




やっぱ・・・・深入りなんてするもんじゃねぇさな・・・
ブックマンの仕事ん中で、こういうのが一番辛ェ





俺は、『記録する者』の後継者



この最初で最後の例外の最期も
俺は記録として書き綴らなければならないのだ



この"今"も、そのうちいつかは"過去"になってしまうのだろうか


(君の死を記録として俺が残さなければ、君の死は無かったことになってくれるのだろうか)(いや、彼女の存在が無かったことになってしまうのか)

 

 

短っ←