この世界を揺らす



   切ない叫び声を静められるなら









戦争と平和










「っ・・・・薬はまだかっ!!」






「はいっ!ただいまお持ちしますっ!!」





「早くしろっ!!

 ソコ、抑えてろ。行くぞっ!!」





ガキンッ






「ぐあああああっ!!!」





「早く、止血を!

 圧迫の仕方が分からないなんて言うなよ」









ここは、黒の教団の医務室


危険な仕事の多い黒の教団では、患者が絶えることはない



しかも、ココ最近伯爵の行動が激化している今では

探索部隊、エクソシスト共に負傷しているのが現実でココ最近は一睡もしていない。



血塗れの手袋を外して、一日に数時間あるかないかと思われる休憩に入ることにした。













「はぁ・・・・・」






「お疲れ様」







ソファに深く沈むように座って宙を眺めていると、
横から聞きなれた声と共にコーヒーの苦い匂いが漂う








「コムイか・・・」







「コーヒー飲む?」






「あぁ、ありがとう」








差し出されたコーヒーカップを受け取ると、眠さを紛らわすようにカップに口を付けた
ほろ苦い味が口に広がり、久しく飲んだそれに少々顔を顰める









「苦い・・・・」






「タバコの味のほうが苦いと思うけど?」






「アレはもうなれたから平気なんだよ」








言いながら、またコーヒーを飲むと隣のコムイが「ははっ」と笑う
そのコムイの様子を横目で窺うと、視線を再びコーヒーカップへと戻した








「何無理して笑ってんだ?」






「・・・何が?」






「安い演技は止めろ。バレバレなんだよ」







と、言うとコムイの顔からは笑顔が消え、何かを悼むような顔になった







「何でちゃんにはばれちゃうかなぁ・・・?」






「ばーか。わかんないほうがおかしいだろうが」





「ははっ、相変わらず厳しいね」





「また、自分の責で誰かが死んだと思ってるのか?」





「・・・・また、エクソシストが死んだ・・・


 彼らを戦場に追いやったのは・・・僕だ・・」








コムイのカップを持つ手がカタカタと震える


あぁ、こんなにもコイツは一人で何かを背負って生きてるのだな


とそれで実感する









「違うな。追いやったのはお前じゃない。

 神だよ」





「・・・ちゃんが神なんて言うのは珍しいね」






「神なんて信じてないからな。

 でも、そんな一人で抱え込んでるお前見たら・・・縋りたくもなるだろ・・・」






ちゃん・・・」







「なぁ・・・コムイ・・・

  俺をヘブラスカの所に連れてってくれないか?」
















   
愛した人の叫びを止められるなら

 
 僕は君の悲しみも抱きしめよう









 

 


花言葉は終わらない戦い