*ゴマすり棒装着時


「うおおおー!!」
「ステキー!!」
様ー!!!」
「拙者、様の為なら、例え火の中、水の中、敵陣の真っ只中でござるうううう!!!」


「あ・・・あの・・・・」
「なんだ」


「恥ずかしいので・・やめませんか・・・?それ」


恥ずかしそうに俯きながらも、は刑部の手で今も尚ゴリゴリと音を立てて
擦られているゴマすり棒を指差した


「なに、そう恥ずかしがるな
 主にあのように言葉を送ることで、兵の士気も上がっておるのよ」


「そう・・・なんでしょうか・・・?」


刑部に言われ、はチラリと視線を声援を送くってくる兵たちに向けた
兵の一人と目が合った為、頬をやや引きつらせながらも何とか微笑めば
声援が倍に、目の合った兵士はよほど嬉しかったのか「うおおおおお様と目が合ったァアアアア!!!拙者・・・拙者ァアア!!」
と、謎の雄たけびを上げながら敵兵へと果敢に向かって行った

余計に顔を引きつらせたは、怯えながら助けを求めるように三成へと視線を向けた
一部始終を見聞きしているであろう三成は、腕を組みながらいつも以上に眉間へと皺を寄せている



「・・・半兵衛様のご指示だ」



三成はそうとだけ言うと、くるりと背中を向ける
は「うう・・・」と唸りながら肩を落とすと、諦めたように小さくため息をついた


「半兵衛様のご指示といえど・・・やはり恥ずかしいですよ・・・」


「嘆くな嘆くな
 主がそのように肩を落としていては、兵の士気も上がらぬであろう
 賢人の策と兵の主への滾る想い、優しいは無駄にせぬよなァ?
 ヒヒッ」


「・・・大谷様、楽しんでるでしょう」


「はて、何のことやら」


が包帯で覆われた口元が確かに笑っているのを恨めしげに見つめても
刑部の手に握られたゴマすり棒が動きを止めることは無い
むしろ拍車がかかったようにゴマすり棒の動きと兵の盛り上がりは増している



「うおっ、すげー熱気」


「左近!遅いぞ!!」


「すんません、三成様!!!」




三成に一喝され、左近が勢いよく頭を下げる
「遅れたぶん、しっかり働きますんで!!」と言いながら笑えば
「当然だ」と三成が返す

三成から少し離れたところに肩を落として佇むの近くまでやってくると
なんとなく状況を把握した左近はぽん、との頭に手を乗せた
乗せられた手にが顔を上げると、羞恥で赤くなって僅かに潤んだ瞳に左近は思わずドキリとする



「左近さん・・・」


「まぁ、あれだ
 元気出せって!俺たちでパパーッと戦終わらせちまえば
 このゴマすり大声援からも開放されんだろ?
 オレとちゃんがマジんなりゃぁ、余裕っしょ」



言ってニカッと笑う左近とその言葉に、ようやくの顔に笑みが戻る



「そう・・・ですね!頑張ります!」


「そうそう、その調子ってな!」


「はい!こうなったら早く戦を終わらせるために兵士の皆さんにも協力していただかなくては!

 皆さん!宜しくお願いいたしますね!」



が兵士たちに向かって大声で叫ぶと、「うおおおおおおお!!!!」と
先ほどの数倍とも言える大きさの雄たけびが、戦地に響き渡る

(半兵衛様が仰ってたゴマすり棒の力なのか、それとも兵たちの元々感情なのか・・・どっちなんかねぇ・・・)

左近は思わず両手で耳を塞ぎながら、いつもの調子に戻った様子のをちらりと見やり
いつもよりも数倍は機嫌の悪そうな主君へと目を向けた

いつ恐惶状態になってもおかしくなさそうな三成の様子に、
これは早く片付けたほうがよさそうだと左近は小さく嘆息した

そんな将達の思い思いの気持ちを知ってかしらずか、
兵士達の声援は益々大きく、勢いを増していく



「うおおおおお!!さまああああ!!!」

「拙者・・・拙者もう・・・もう・・・!!」

「拙者、様の盾となり矛となり、この戦場に身を散らす覚悟にて候おおおおおおお!!!!」

「この麗しい様の姿が今日も・・・拙者の夢に・・・!!!うっ・・・!!」

「拙者、さまのそのお姿だけでオカズは十分でございますうううううう!!!」



「ブフッ!!!」


勢いを増した兵達の発言に、些か不穏なものが混ざり始めてきたところで左近は思わず噴出した
さっきのはやっぱり後者か!などと思っているところに、左近の様子を訝しんだ三成とがやってくる


「おい、左近
 如何した」


「どうかしましたか?」


「いっ、いやぁ!
 なんでもないっすよ、ねぇ刑部さんっ!!」


「我にはなんのことか、とんと分からぬなぁ
 はて、何をそんなに慌てておる左近
 我にもぜひ、教えて欲しいものよ」


「(ぜってぇ分かってる!!!)」


詰め寄る三成と首を傾げるに左近は冷や汗をかきながら二人を見ないように視線を逸らす
そしてなおも止まない兵士達のへの声援


「おい、左近言え
 何があった」


「い、いやぁ・・・ってか、三成様分からないんっすか?」



意味が分かっていれば誰よりも先に激昂しそうなこの主君が平常であるならば
おそらく意味は分かっていないとわかりつつも左近は問う
案の定、続いて「何がだ」と返された時には、左近は頭を抱えたくなった

言っても地獄、言わなくてもこの後大谷が言うか、大谷に言わされて地獄になるかのどちらかであろう
大谷はといえば楽しそうに口元を歪めて今の様子を楽しんでいる
意を決した左近は心中で南無三と呟いた



「はぁ・・・じゃあ、ちょっと三成様
 申し訳ないんですけど、ちょっとお耳貸して下さい」


「なんだ、早く言え!」


「えーっとっすね・・・ごにょごにょ」



左近の耳打ちを、最初はふむ、と聞いていた三成であったが
次第にその目は鋭く、刀を持つ手に力が入っていく
耳打ちしながら感じるその三成の怒りに、左近は切に帰りたいと願った
内容を知らないは三成の怒りを露にする様子に戸惑いを見せ、大谷はついに「ヒッヒッ」と笑い出した



「ってことっす・・・」


「おおおおおのおおおおれえええええええ!!!!!
 貴様らァアアアア!!!!」


「三成様!?」



左近が言い終わるや否や、敵陣ではなく自陣に向かう三成
ゆらりと幽鬼のように歩を進めたと思えば、次の瞬間には兵達の目の前へと移動していた
突然眼前に現れた三成に、思わず声援をとめる兵士達
そして三成から迸る怒気とその絶叫に、思わず後ずさる



「貴様らァアア!!!
 半兵衛様の采配と黙って聞いていれば、そのような不埒な目でを見ていたとは・・・!!!
 万死に値する!!!!!」


「ひいいい三成様!!
 お許しをおおおお!!!」


「黙れェ!!!!!
 を・・・をその脳内ですら蹂躙することなど・・・私が許可しない・・・!!!
 許可するものかァアアア!!!!を蹂躙できるのは・・・私だけだァアアア!!!」


「ひいいい!!!三成様が恐慌状態に!!!!」


「ちょっと待ってください話が見えません!!」



恐慌状態でとんでもないことを叫んだ三成に、唯一状況を把握できていないが待ったをかける
しかし、今の三成に声は届かず、暴走は続く



「私に斬られたくなければ疾く戦場へ出ろ!!!行けええええええ!!!!」


「ひいいいお許しを三成様ァアァアア!!!」


言いながら兵を追い立てながら戦場へと三成は駆けて行く
三成のその狂気に追われて、兵達は驚くべき速さで戦場へと向かって行った

追われた兵達が転ぼうものなら、その首筋に鞘を添えて
「言え、貴様はどのようにをその穢らわしい脳内で蹂躙したというのだ!!!言え!!!」
「ひいいいいい!!!お許しくださいいいい!!!!」
「二度とをそのような目で見ぬと誓え!!!!」


「ふむ・・・この策は二度とせぬほうがよかろ」


「俺もそう思いますマジで」


を・・・を穢させるものかあああああ!!!!!!」





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20140630
石田軍平和
口調難しい上に纏まらなかった!^q^





(賢人には失策と伝えよう
 ほれ、、何を呆けておる
 暴走した三成を止められるのは主だけよ、はよう行きやれ)


(えっ)